Overview
WonderLookProとは?
WonderLookProは、カメラ、モニタの色空間の相互変換、色調整によるルック作成を基本機能に持つ、総合色管理ソフトウエアです。映画・CMなどのLOGカメラ撮影、ライブやスポーツなどのマルチカメラによる中継、種々のカメラや素材を扱うスタジオでの番組制作、など幅広い分野で活用でき、ワンランク上の映像制作に貢献します。
WonderLookProの一番の目的はLUTを作成することです。図のように、TVLogicが提供するプロファイルや変換を利用したり、ユーザーのUIの操作による色調整を反映したり、その他種々の条件を加えて必要なタイミングでLUTを作成します。作成されたLUTは、LUTBOXやCameraにリアルタイムに送信される他、ファイルに書き出してポストプロダクションで活用したりします。
これが、WonderLookProの中心となる機能です。
品質が高く、適切な内容のLUTを作成するために、様々な機能を取り入れています。
最も重要な機能は、色管理機能です。ACES(WonderLookProの色管理を参照)をベースにした高精度で自由度の高いエンジンを搭載しており、専門知識の無い方でも、高度な色管理を活用したLUT作成が実現できます。
LUTの管理機能も充実しています。作成されたLUTは、そのままの状態で活用するだけでなく、様々な形に変換して利用できるので、多目的な活用が可能です。
クリエイティブな色を作るための支援機能も充実しています。シンプルかつ強力な色調整インターフェースに加え、静止画を活用した解析・支援機能、LUTのビジュアライズ、マルチディバイスサポートなど種々の機能でより良い映像を作ることを支援します。
それでは主な機能について解説していきます。
簡単に利用可能な色管理機能
色に関する映像制作の基本機能は、ある色空間からある別の色空間への変換に対し、必要に応じて色調整を加えること、です(合わせたものを「色変換」と呼ぶことにします)。
この変換をすべて組み合わせたLUTを作成することがWonderLookProの主たる機能となります。
「色空間から色空間への適切な変換」を行うためには、正確な色空間の情報を管理し、適切に色空間を取り扱う必要があります。WonderLookProではGUIでパラメーターを選択するだけで、この、「色空間から色空間への適切な変換」が実現できます。
色管理機能の無いソフトウエアで同じことを実現しようとすると、別途、適切なLUT等を用意する必要があり、それなりのスキルと知識が要求されます。WonderLookProでは、色空間を定義するパラメーターの知識さえあれば、それ以上の専門知識は必要がありません。
「色調整を加える」ことができるソフトウエアはたくさんあります。WonderLookProを使用することのメリットは何でしょうか?
WonderLookProは、高価なグレーディングソフトのように、マスクを切ってセカンダリー調整をしたり、レイヤーを重ねていく、などの高度な機能は持っていません。
その代り、カラコレの専門知識がなくても直感的に各種色調整が可能な手段を提供しています。それに加え、種々のフィルムルックや、著名カラリストやDITが作成したプリセットのルックを数多く提供されており、クリックするだけで利用可能となっています。
もう一つ、作成した「色調整」は、多目的に利用可能です。異なるタイプのカメラでも問題なく使用できますし、HDRとSDRのプロジェクトで共通のルックを使用することもできます。
強力なLUT管理・活用機能
WonderLookProは、色空間の設定や色調整を行ったタイミングで、リアルタイムに3DLUTを作成します。LUTBOXが接続されていれば瞬時にデバイスに転送され、リアルタイムに結果を確認することができます。この機能のおかげで微調整も容易に行うことができます。
動作するパソコンに処理能力は要求しないので、とてもコンパクトな環境で「色調整(ルック)」を作成することができます。
また、作成した「色変換」はリストに保管して、瞬時に切り替えたりファイルに書き出したりすることができます。ファイルに書き出す際は、各種ソフトウエアにフィットしたファイル形式でLUTを保存することができます。LUT書き出しの際に、モニタ色空間を再設定することができるので、Rec709でビューイングしてDCI-P3向けのLUTを作成する、など、条件違いのLUTも簡単に作成可能です。
WonderLoonProの強力な柔軟性は、既存のLUTファイルを活用する際にも発揮されます。
例えば、上記の例に近いのですが、DCI-P3用向けに作成されたLUTをRec709向けに変換して利用することができます。
また、SONYのカメラのSLOG3向けに作られたLUTを、ARRI社のAlexa向けに変換して利用する、という、一見、不可能に思えるような活用も簡単に行うことができます。
このように、WonderLookProでは、高度な色管理機能により、LUTの入出力を強力にサポートし、利用者が直接LUTの中身を書き換えたり、外部のツールでプレ変換を行ったりすることなく、多種多様な利用法を提供しています。
撮影や色調整に役立つ画像解析機能
WonderLookProは、静止画を読み込んだ状態で色調整を行うことができ、調整結果はリアルタイムに画像表示に反映されます。
でも、それだけではありません。この画像を活用して、いろんなお役立ち機能を提供しています。
本機能は、あらかじめ保存された静止画を読み込んでの利用となりますが、IS-miniX、BoxIO、AlexaなどFrameGrab機能を持つデバイスを使用するとキャプチャ映像、IS-miniXを使用するとライブ映像、を活用することができます。
まずは、WaveForm表示機能。%, 10bitCV, nitsのメモリが付与されたWaveFormグラフをリアルタイムに表示します。興味深いのは、画像上でマウスを動かすと、そのピンポイントの画素情報のポイントがWaveFormグラフに示されることです。ハイライトやシャドーの露出、照明の確認が極めて迅速に可能です。また、LUT処理前後をワンクリックで切り替えることで、素材、最終仕上がりの両方を確認可能です。
表示画像の画素値を取り出すことも簡単です。選択した範囲のすべての画素値、平均値、縦方向での平均値(解析用映像で有効活用できます)、など、種々の取り出し方で、エクセルに貼りつけて利用することができます。
画像中のグレーの部分を選択して、グレーバランスのパラメーターを自動生成して取り込むことができます。照明の色温度の微妙なずれやレンズの色転びをワンアクションで調整することができます。(キャプチャ画像が取得可能な場合も機能ですね)
また、あるカメラの肌色を別なカメラの肌色に合わせる、という機能もあります。今後、この、カラーマッチング機能は強化していく予定なので期待していてください。
画像の活用はこれには留まりません。ルックを保存すると、ルックとともに保存され、いつでも再読み込み可能です。また、LUTをファイルに書き出す際に、LUT処理前後の画像も同時に書き出され、LUTの内容確認やワークフローの整合性確認に極めて重宝します。
利用可能な画像はユーザーが用意するものだけでなく、プリセットで提供されるものも数多くあります。グレーグラデーション、カラーチャート、指定画素値のベタ画像、など、システム解析に役立ちそうな画像を取りそろえています。
静止画再生可能なdeviceを利用していれば、これらの画像をdeviceに送信して再生することができます。現在ではIS-miniXのみの対応となっていますが、今後、BoxIOも対応する予定です。
以上のように、WonderLookProは静止画のみとなりますが、画像を最大限活用するように機能強化されてきています。今後もこの機能はまだまだ拡張されます。
柔軟かつ有用なマルチカメラサポート
WonderLookProは2~3台のLUTBOXを切り替えて使うこともできますし、数十台のLUTBOXをいくつかのグループに分けて制御することもできます。最大で70台同時制御の実績があります。
このようにマルチカメラのプロジェクトをサポートするために、グルーピング機能とルックシンク機能を搭載しています。
グルーピング機能は、グループ化したデバイスに全く同一のLUTを送り込むことができる機能です。4chでの4K撮影、カメラ機種混在の機種別制御等に有効です。
ルックシンク機能は、異なるカメラ、異なるレンダリング、異なるモニタ設定のLUTBOXのルックを同時に調整することができる機能です。
両者を組み合わせることで、どんなにスケールの大きいプロジェクトでも、柔軟に対応することができます。
上記は、4Kカメラ4台、HDカメラ4台を、ABC3グループのルックシンクで運用している例です。
カメラのコントロールとメタデータ取得・管理
WonderLookProはクリエイティブなLUTを作成することが主目的ですが、ワークフローのサポートの一環としてカメラの撮影条件や各種設定などのメタデータの取得・保存・活用を行うことができます。
また、対応するカメラは限られますが、Recの制御、White BallanceやISO感度の設定など、カメラの撮影条件をWonderLookProから直接制御可能な機能も搭載しています。
このように、カメラ、LLUTBOX、WonderLookProが一体となって、撮影現場のワークフローサポート機能を強化していきます。
上記は、VaricamLTの制御画面。録画制御に加え、White Ballance、EI、Shutter Speedの制御が可能。メタデータはすべて保持しているが、テーブルで監視したい項目を選択することができる。
HDR制作対応と様々な支援機能
HDR制作を行うためには、各種色空間の変換や、SDRの時とはやや異なった観点でのビューイング、同時に異なる二つのモニタ色空間へ向けた制作、など、新たに多くの課題に直面します。
WonderLookProはそれらの課題を解決するために、種々の機能を提供しています。
例えば、色空間の変換に関しては、PQ,HLGなどのHDR、Rec709のSDR、の相互の変換はパラメーターを選択すればあらゆる組み合わせを実現できますし、代表的な変換についてはプリセットで用意されており、クリック一つで選択できます。また、BT.2100で導入されたHDRのOOTFだけでなく、フィルムルックやRRTなど、数多くの種類のOOTFを選択可能となっており、多彩な映像制作を支援します。
HDR制作において、HDR to SDR変換は欠かせません。規格通りの変換では好ましい映像にならず、ハイライトのマッピングや露出調整など、種々のカスタマイズを加えて、初めて良い品質のSDRが制作できます。この変換についても、数種類のプリセットが用意されており、最適なものを選択してからさらにチューニングする、という方法が可能です。
その他、HDR色域のワーニングやHDRスケールのヒストグラム、WaveFormなど、数多くの支援機能を搭載しています。
LUTの中身の直感的なビジュアライズ
LUTは単なる数字の羅列であり、その数字を眺めても、どのような内容の処理なのか推定することができません。しかしながら、入出力設定や色調整が意図通りに反映されているかどうか、LUT自体の検証も行うことが望ましいと思われます。もちろんLUTにより処理を行った映像により判断するのも一つの方法です。WonderLookProに内蔵されている種々の評価画像を用いて、ビジュアルにLUTの妥当性を評価する、という方法もあります。この場合、WaveFormグラフは一つの判断材料となります。
WonderLookProでは、SystemToneCurveというグラフを常に表示させることができます。このグラフはすべての設定を組み合わせた、オーバーオールの無彩色の入出力関係をグラフで表示したものになります。この形を見ることで、どこかでクリップされていないか、非線形や反転している部分はないか、シャドーは浮いていないか、スケーリングは正しいか、などいろいろな情報を読み取ることができます。
また、主要6色については、CrCb平面での色相・彩度の変化を表示させることができます。こちらも色をどのような方向に変化させる処理となっているか、のだいたいの方向性を読み取るのに役立ちます。
以上、WonderLookProの設計にあたっての考え方、および主な機能について説明しました。