Rendering
レンダリング
WonderLookProでは、「レンダリング」を「シーンリファードからアウトプットリファードに変換すること」と定義しています。もう少し分かりやすく言うと、出力デバイスの再現に適した映像に変換する、ということになります。WonderLookProでは、レンダリングを構成するパーツ、例えばネガフィルムルックや、マッピング、ガンマ変換、等も、レンダリングの選択肢に入れています。
ここで、WonderLookProに登場する様々な色変換の位置付けを整理しておきましょう。
Category |
色空間の定義 (数字の意味) |
色そのもの |
シーンリファード アウトプットリファード |
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色空間変換 |
IDT,ODTなど、 入力変換、出力変換 |
変換される (数字が変わる) |
変換しない。 見た目同じ色を維持。 |
変化しない |
広義のレンダリング |
狭義のレンダリング |
変換しない (同じ色は同じ数字) |
変換される。 見た目で異なる色となる。 |
一般的には、シーンリファードをアウトプットリファードに変換 |
カラーコレクション |
変化しない |
まず、色空間変換グループ(入力変換・出力変換)と、広義のレンダリンググループで大きな違いがあります。前者の色空間変換は、は色を表す数値が変化しますが、数値が変わっても意味する色そのものは変化させません。
後者の広義のレンダリングは、同じ色は同じ数値で表現することは維持しますが(色空間を変更しない)、数値を変えることにより色そのものを変更することを目的としています。
広義のレンダリングは、狭義のレンダリングとカラーコレクションに分類することができます。運用上、この二つは厳密に分離する必要はありませんが、狭義のレンダリングはシーンリファードをアウトプットリファードに変換すること(出力に適した映像にする)、カラーコレクションはそれ以外、と理解しておけば良いと思います。重要なことは、いずれにしても、レンダリングは色そのものを変化させる、ということです。
レンダリングを行わないとどうなるでしょうか。
レンダリングを行わないということは、シーンリファードの映像がそのままモニタに表示する、ということになります。すなわち、オリジナルシーンの色を、忠実にモニタに再現するわけです。
医療用の手術画像、美術品などの記録映像など、オリジナルの色をなるべく正確に再現したいニーズのある映像システムは、レンダリングを行わずに、なるべく忠実な色をモニタ上で再現するようなシステムを組むことになります。もちろんWonderLookProでも、レンダリングを使用しない、選択をすることができ、これらの用途でも使用することができます。
しかし、映画、CM、ドラマなど、作り手の意図を表現し、視聴者がエンタテインメントとして楽しむための映像には、忠実色再現は不向きです。より、鮮やかでメリハリの利いた映像表現を目指したり、色彩度を落として時代表現をしたり、様々な工夫を行って映像制作が行われています。これらの色に関する映像表現は、広い意味のレンダリングのカテゴリーに属します。
WonderLookでは、プリセットから選択する狭義のレンダリングと、ユーザー自身が色を調整するカラーコレクションの組み合わせにより、広義の意味のレンダリングである、アウトプットリファードの映像を作っていきます。
ここでは、狭い意味のレンダリング、WLPがプリセットで提供しているレンダリングについていくつか事例を紹介します。
ACESのレンダリング:RRT
最もわかりやすい例としては、ACESのRRTが挙げられます。
シーンリファードであるACESからアウトプットリファードであるOCESに、RRTにより変換しています。従来、カラーネガフィルムとポジフィルムが担っていた役割です。
AMPASでは、RRTは唯一無二のものであり、同一のACES画像からは同一の映像が出力されるべき、との考え方に立っています。絵作りはすべてLMT(ルック)で行うことになります。
ところが現実の映像制作では、多種多様な目的で映像が作られており、RRTだけにレンダリングの役割を負わせるには無理があることがわかりました。そこでWonderLookProでは、RRTの代わりに、様々なレンダリングの選択肢を用意しており、最もその作品の方向性に近いレンダリングを選択した上で、シーンごとのルック調整を行う、というワークフローを提供しています。例えば、レンダリングにFUJIFILM Print DIを選択するだけで、ポジフィルムを投影しているような仕上がりを瞬時に得ることができます。また、ネガフィルムのルックも多数用意されており、全体の硬さと組み合わせて選択することができます。
ベースがACESのワークフローで、デバイスに依存しない色管理を行っているため、カメラを変更しても、ほぼ同一の仕上がりを得ることができます。
レンダリングの設定画面
HDRにおけるレンダリング : OOTF
HDRの規格で注目されているOOTFもレンダリングの一種です。
下記はPQのワークフローです。
(Recommendation ITU-R BT.2100-1より抜粋)
OOTFの左側がシーンリファード、右側がアウトプットリファードになるので、モニタはアウトプットリファードのPQ信号を受けることになります。
HLGのワークフローは下記のように紹介されています。
OOTFはモニタ内に埋め込まれおり、カメラからの出力、モニターに入力する信号、ともに、シーンリファードとなっています。
HLGの信号をPQに変換する必要があるとします。
HLGの信号はシーンリファードであり、OOTFは含まれていません。一方のPQは、アウトプットリファードであり、OOTFが含まれていることになっています。
そこで、下記の2または3のケースが考えられますが、2は1のHLGモニタと一致しますが、3は一致しなくなります。
正解がどちらか、という問題ではありません。どちらの方法で変換すべきかは、PQに変換したあとの活用方法に依存します。
PQの映像とHLGの映像の相互変換を行うには、OOTFの扱いに十分注意しなければならないことがわかります。
WonderLookProでは、このような色空間に加えて、レンダリング、OOTFをどのように取り扱うか、簡単に設定することができます。
WonderLookProにおけるレンダリングの取り扱い
WonderLookProでは様々なレンダリングを極力3DLUT化せず、スクリプト言語であるCTLの形式で管理しています。入出力はACESで統一しているため、どのようなワークフローにも適用することができますし、順番を気にせずにいくつでも組み合わせることができます。現在は、ユーザーインターフェースの制約により、ある範囲でしか組み合わせができませんが、今後は、ユーザーインターフェースの改良により、より自由度を高めたレンダリングの選択ができるようにしていきます。