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LOGとは

LOG映像 基礎講座

みなさん、こんにちは。内田です。

このページではLOG映像を活用した映像製作について、今後、数回にわたりLOG映像について解説をしたいと思います。

  • そもそもLOG映像って一体どういうものなのだろう?
  • LOG映像で映像製作を行いたいが、何をどうすれば良いのだろう?
  • LOG映像を活用して映像制作をしているけれど、今一つ効率やクオリティが上がらない・・・

といったお悩みや疑問をお持ちの方々にお答えしていければと思っています。

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※講座の内容は変更になる可能性があります。

FUJIFILM技術を活用したLOG活用

第四回 LOG映像は何故眠い?その2:「何らかの変換」=「レンダリング」

みなさんこんにちは、内田です。
前回はシーン・リファード画像・アウトプット・リファード画像という概念を用いて
「ほとんどの映像信号は生成時はシーン・リファードであり、何らかの変換が施されてアウトプット・リファードの映像となる。」
「アウトプット・リファードの映像は、そのまま対応したディスプレイに表示することができる。」

ということを説明しました。


このことから
「シーン・リファード画像であるLOG映像はそのままディスプレイで鑑賞する目的の画像ではない」
ということをご理解頂いたと思います。


今回は前回に引き続き、「LOG映像は何故眠い?」ということについて「何らかの変換」としていた部分を説明しながらその中身を紐解いていきたいと思います。

シーン・リファード映像をアウトプット・リファード映像にする「何らかの変換」って何だろう?

映画フィルムにおける「何らかの変換」とはいったい何か?

さて、シーン・リファード映像をアウトプット・リファード映像に変換する「何らかの変換」とはいったい何でしょうか?
どのような変換をすればシーン・リファードの映像をアウトプット・リファードの映像に変換できるのでしょうか。
まずは映画フィルムの例を見てみましょう。
オリジナルシーン→ネガフィルム(ネガ濃度)=シーン・リファード画像→プリント作業=何らかの変換→ポジフィルム=アウトプット・リファード画像

映画フィルムの場合、プリント作業の工程中に「何らかの変換」がされていることがわかります。


映画の世界ではより良い映像を求めて、100年以上の間、映画用ネガフィルムと映画用ポジフィルムの改良が行われて
きました。この高品質映像をスクリーン上に作り出すためのノウハウが、プリント作業工程(何らかの変換)に凝縮されて
いるのです。この中には、ネガフィルムの各種特性、現像処理、ポジフィルムの各種特性など様々な要因が含まれます。
それらがすべて結合されて映写用ポジフィルムが出来上がるのです。


映画フィルムの世界では、100年以上のノウハウが使用されるネガフィルム、ポジフィルムの特性やプリント作業に凝縮されて良い映像が作られていたんだ!

現在の映像制作における「何らかの変換」とはいったい何か?

映画フィルムのプリント作業工程で行われていたこの「何らかの変換」をデジタル的に行っているのが
現在の映像製作です。

現在の映像制作で行われている「何らかの変換」の例を下記に示します。

  1. グレーディングソフトでフィルムプレビューLUTを通して表示
    フィルムプレビューLUTが「何らかの変換」に相当します。
    通常、プリントフィルムの計測によって作成されているため
    「フィルムの色再現をデジタルでエミュレートしたもの」という変換になります。
  1. ビデオガンマを当ててカメラから映像信号出力
    「ビデオガンマ」が「何らかの変換」に相当します。
    通常の場合、シーン・リファード映像を階調特性のみモニタに合わせた変換を施したことを指しており
    好ましい色再現等は含まれていません。
  1. LOG映像をオンセットグレーディングしてプレビューを行う
    この場合、「オンセットグレーディング」が「何らかの変換」に相当します。
    DITが映像を見ながら、最終映像に近い評価可能な映像となるように色調整を加えていきます。

「何らかの変換」の中身を分解してみてみよう

前項で「何らかの変換」の例をいくつか紹介しましたが、ここで「何らかの変換」の中身をもう少し分解してみましょう。
シーン・リファード映像をアウトプット・リファード映像にするためには様々な変換が行われているんだな。
「何らかの変換」と呼んでいた中身は、実は下記のように機能を大きく3つに分解することができます。
①階調変換 ②色変換 ③デバイス依存変換
これらの①②③を組み合わせて、「何らかの変換」が構成されています。
私たちはこの変換のことを「レンダリング」と呼んでいます。
それぞれの変換について、詳細を下記にまとめます。
①階調変換 オリジナルシーンは無限のダイナミックレンジを持っています。カメラのセンサーで捕らえることにより、ダイナミックレンジはある程度狭められますが、最近のシネマカメラはかなり広いダイナミックレンジを持っています。その一方で、ディスプレイのダイナミックレンジは限られており、何らかの方法でダイナミックレンジを制限(圧縮)する必要があります。また、日中屋外の明度は極めて高く、ディスプレイでその明るさの絶対値を再現することは困難です。オリジナルシーンより暗いディスプレイで映像再現を行う場合、映像の明暗さ(階調)がオリジナルシーンと同じだとメリハリが乏しく感じられます。そこで、このような場合は階調を硬くして、オリジナルシーンのメリハリ感に近づくような調整が行われます。
②色変換 忠実色再現が基本ですが、ディスプレイ上で鑑賞して好ましい色となるような変換が施されます。人間の肌色や青空、自然の緑などは、忠実な色再現よりも、記憶色に近い色が好まれます。また、シーンによっては心理描写を行うために大きな色補正を行うこともあります。
③デバイス依存変換 最後のステップは、ディスプレイに出力可能となるような信号に変換するプロセスです。いわゆるディスプレイに入力可能なコードバリューに変換することが目的となります。
ディスプレイのダイナミックレンジや色再現域に収まるような前処理を施したのちに、原色変換、WhitePoint変換、ガンマ変換などを行った上で、10bitなどの整数のコードバリューに変換します。
さて、皆さんはACES規格というものを聞いたことはありますでしょうか?
ACES規格はデジタル映像制作の色管理の標準化を目的に制定された規格ですが、実はこのシーン・リファード映像、
レンダリング、アウトプット・リファード映像の考え方を最大限に生かした構成となっております。
ACES規格
上図は、私がACES規格の説明でよく使用しているダイアグラムですが、カメラから始まってACESまではシーン・リファード画像、RRTがレンダリング、OCES以降がアウトプット・リファード画像に分類できます。この3者をきちんと分離することにより特定の
デバイスに依存せず、汎用性の高いとても柔軟なワークフローが構成可能です。
今回の講座の内容も踏まえて、ACES規格については別途、説明したいと思います。
次回は、いよいよF55 SLOG3の徹底解剖を行いたいと思います。お楽しみに!

内田氏プロフィール

自称、映像システム設計のお困りお助け士。コンシューマーフォトからスタートし、Cineonが発表される前、1995年頃から
LOG映像を使ったシステム設計に携わる。現在は、手間隙かけずにカメラの性能を引き出した絵作りができるような
ソリューションの実現に心血を注いでいる。

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