みなさん、こんにちは。内田です。
このページではLOG映像を活用した映像製作について、今後、数回にわたりLOG映像について解説をしたいと思います。
- そもそもLOG映像って一体どういうものなのだろう?
- LOG映像で映像製作を行いたいが、何をどうすれば良いのだろう?
- LOG映像を活用して映像制作をしているけれど、今一つ効率やクオリティが上がらない・・・
といったお悩みや疑問をお持ちの方々にお答えしていければと思っています。
- 第一回 各種カメラの階調特性のグラフを見てみよう
- 第二回 そもそもLOGって何?
- 第三回 LOG映像は何故眠い? その1 シーン・リファード画像?アウトプット・リファード画像?
- 第四回 LOG映像は何故眠い? その2 何らかの変換=レンダリング
- 第五回 LOG映像は何故眠い? その3 S-Log2/S-Log3を徹底解剖
- 第六回 IDTとは? 主なカメラのダイナミックレンジを大公開!
※講座の内容は変更になる可能性があります。
みなさんこんにちは、内田です。
前回はシーン・リファード画像・アウトプット・リファード画像という概念を用いて
「ほとんどの映像信号は生成時はシーン・リファードであり、何らかの変換が施されてアウトプット・リファードの映像となる。」
「アウトプット・リファードの映像は、そのまま対応したディスプレイに表示することができる。」
ということを説明しました。
このことから
「シーン・リファード画像であるLOG映像はそのままディスプレイで鑑賞する目的の画像ではない」
ということをご理解頂いたと思います。
今回は前回に引き続き、「LOG映像は何故眠い?」ということについて「何らかの変換」としていた部分を説明しながらその中身を紐解いていきたいと思います。
どのような変換をすればシーン・リファードの映像をアウトプット・リファードの映像に変換できるのでしょうか。
映画フィルムの場合、プリント作業の工程中に「何らかの変換」がされていることがわかります。
映画の世界ではより良い映像を求めて、100年以上の間、映画用ネガフィルムと映画用ポジフィルムの改良が行われて
きました。この高品質映像をスクリーン上に作り出すためのノウハウが、プリント作業工程(何らかの変換)に凝縮されて
いるのです。この中には、ネガフィルムの各種特性、現像処理、ポジフィルムの各種特性など様々な要因が含まれます。
それらがすべて結合されて映写用ポジフィルムが出来上がるのです。
映画フィルムのプリント作業工程で行われていたこの「何らかの変換」をデジタル的に行っているのが
現在の映像製作です。
現在の映像制作で行われている「何らかの変換」の例を下記に示します。
- ① グレーディングソフトでフィルムプレビューLUTを通して表示
フィルムプレビューLUTが「何らかの変換」に相当します。
通常、プリントフィルムの計測によって作成されているため
「フィルムの色再現をデジタルでエミュレートしたもの」という変換になります。
- ② ビデオガンマを当ててカメラから映像信号出力
「ビデオガンマ」が「何らかの変換」に相当します。
通常の場合、シーン・リファード映像を階調特性のみモニタに合わせた変換を施したことを指しており
好ましい色再現等は含まれていません。
- ③ LOG映像をオンセットグレーディングしてプレビューを行う
この場合、「オンセットグレーディング」が「何らかの変換」に相当します。
DITが映像を見ながら、最終映像に近い評価可能な映像となるように色調整を加えていきます。
私たちはこの変換のことを「レンダリング」と呼んでいます。
ACES規格はデジタル映像制作の色管理の標準化を目的に制定された規格ですが、実はこのシーン・リファード映像、
レンダリング、アウトプット・リファード映像の考え方を最大限に生かした構成となっております。
デバイスに依存せず、汎用性の高いとても柔軟なワークフローが構成可能です。
今回の講座の内容も踏まえて、ACES規格については別途、説明したいと思います。
内田氏プロフィール
自称、映像システム設計のお困りお助け士。コンシューマーフォトからスタートし、Cineonが発表される前、1995年頃から
LOG映像を使ったシステム設計に携わる。現在は、手間隙かけずにカメラの性能を引き出した絵作りができるような
ソリューションの実現に心血を注いでいる。