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LOGとは

LOG映像 基礎講座

みなさん、こんにちは。内田です。

このページではLOG映像を活用した映像製作について、今後、数回にわたりLOG映像について解説をしたいと思います。

  • そもそもLOG映像って一体どういうものなのだろう?
  • LOG映像で映像製作を行いたいが、何をどうすれば良いのだろう?
  • LOG映像を活用して映像制作をしているけれど、今一つ効率やクオリティが上がらない・・・

といったお悩みや疑問をお持ちの方々にお答えしていければと思っています。

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※講座の内容は変更になる可能性があります。

FUJIFILM技術を活用したLOG活用

第三回 LOG映像は何故眠い?その1

みなさんこんにちは、内田です。
前回はLOGの数学的意味を定性的に説明しました。今回からいよいよ画像情報との関わりについて考えていきたいと思います。
デジタル画像のデータが数値で表されていることは皆さんご承知のことと思いますが、
数値自体がいったい何の意味を持っているのかということについては普段あまり意識されていないと思います。


例えばDPXファイルに書かれているRGB=(456,356,243)という色があったとして、
これはいったいどんな色?という疑問に答えることは容易ではありません。


そこで今回は画像データの数値の意味について立ち戻ってみたいと思います。

RGB=(456,356,243)これって一体どんな色?
前回の解説で、0~100までの数値で明るさを表した場合、LOGを使って明るさを表すことのメリットを説明しました。
RGB=(456,356,243)これって一体どんな色?

明るさ数値(0~100の間の整数) = (LOG10(照明の数)+1)/4*99+1
前回は上記の計算式を使いましたね。


この式を逆に解釈すると、次のように言うことができます。
「0~100までの整数それぞれが、『照明の数』を間接的に表している」
数値の意味は明確ですよね。


今回重要なことは、この「定義が明確であること!」なのです。
先に例に出したDPXファイルのRGB=(456,356,243)は、「何を表しているか」がわかって、
その上で「このような色です」ということが明確に言えなければ定義が明確であるとは言えません。

「定義が明確である」とはどういうことか?

今回の例であるDPXファイルのRGB=(456,356,243)の場合、定義が明確であるということは、
「与えられた画素の値が、何らかの意味を持った物理量に変換可能なこと」と言い換えられます。
「何らかの意味を持った物理量」という抽象的な言い方をしてしまいましたが、画像情報にとって意味のある物理量は
通常は、「オリジナルシーンの明るさ(色)」または、「ディスプレイで再現時の明るさ(色)」のどちらかです。

DPXファイルのRGB=(456,356,243) 何らかの意味を持った物理量(色) オリジナルシーンの色 ディスプレイで再現したときの色
カラーマネジメントの世界では、前者をシーン・リファード、後者をアウトプット・リファードと呼び、ほとんどの画像はどちらかに
分類することができます。映像製作の世界ではこの言葉はあまり使われることはありませんが、画像データをどのように取り
扱うべきか判断するために、とても重要な概念です。
シーン・リファード オリジナルシーンの色に変換可能な状態で記録されている。特定のディスプレイに表示することを目的としていない。ディスプレイに表示するためには、適切な処理(レンダリング)を行いアウトプット・リファード画像に変換する必要がある。
アウトプット・リファード ディスプレイにそのまま出力することを目的とした画像。ディスプレイ上での色を計算で求めることができる。ディスプレイにそのまま表示することができるが、ディスプレイの色空間と合致していないと正しく表示されないことに注意が必要である。

「シーン・リファード」と「アウトプット・リファード」の例

まずはシーン・リファード画像の例を挙げます。
  1. SLOG2形式でHD-SDIにより伝送される10bitの映像信号
    SLOG2の定義式により、リニア(真数=シーンの明るさ)に変換可能。よってシーン・リファード画像です。
  1. カラーネガフィルムをスキャンしてCineon形式で保存した10bitDPXファイル
    10bitの数値は、ネガ濃度に比例した情報として格納されています。ネガ濃度は、「特性曲線」と呼ばれる
    ネガフィルムごとの性能カーブにより、オリジナルシーンの明るさに変換することが可能です。
    したがって、こてはシーン・リファード画像です。
  1. CGによりレンダリングして生成したOpenEXRファイル
    各画素についてレンダリングを行うことにより、光量を求め、その値を浮動小数点の画素値として
    OpenEXRファイルに格納しています。
    現実のシーンではありませんが、まさにオリジナルシーンに相当する明るさをリニアで表しており
    シーン・リファード画像であることがわかります。

次にアウトプット・リファードの例を挙げます。
  1. 放送用映像
    TVセットに表示することを目的とした映像。エンコードはYCCでされているが、等価なRGB値に変換可能。
    RGBの値は、Rec709の計算式でディスプレイ上で表示すべき正確な色を計算することが可能。
    精度が100%のRec709 9300K ガンマ2.2 モードを持つモニタが存在すれば、正しい色をモニタ上に
    再現することができる。
  1. DCP
    DCI規格のX'Y'Z'で表されている映像信号。
    DCI規格のプロジェクターで投影すると、正しい色が再現できるような値にエンコードされている。
    逆に言うと、DCIモードを持つ映像機器でないと正しい色を再現できない。Rec709モードしか持たないモニタで
    表示する場合は、映像信号自体にプレ処理(X'Y'Z'→Rec709のRGBへ変換)が必要。
    その場合、色再現域の広さの違いにより、正しく再現できない色が発生してしまうことに注意。
  1. インターネット動画
    素性はともかく、sRGBモニタで鑑賞されることを前提に製作されているので、sRGBモニタをターゲットにした
    アウトプット・リファードな映像に分類できます。ご承知のように、PC用モニタの色再現はばらばらであり
    かつユーザーによって使用しているモニタ設定もばらばらなため、色管理が全く行われていないともいえますが
    sRGBという標準があり、それをターゲットに製作すべきといえます。
  1. グレーディングソフトでフィルムプレビューLUTを通して表示
    Cineon素材等にフィルムプレビューLUTを当ててグレーディングするような場合。
    LUTから出てきた映像はアウトプット・リファードの映像となっています。
    フィルムプレビューLUTは同じフィルムLOOKであってもターゲットとするモニタごとに作られており
    どのモニタをターゲットにするかによりLUTを選択する必要があります。
    (Cineon素材は前述のようにシーン・リファード画像。フィルムプレビューLUTが、シーン・リファード画像を
    アウトプット・リファード画像に変換していることになります)
  1. ビデオガンマを当ててカメラから映像信号出力
    Rec709などのビデオガンマをカメラ内で当てて、HD-SDIから映像信号を出力した場合、この信号はRec709で
    直接鑑賞することを目的とした映像となっており、アウトプット・リファード映像に分類されます。
  1. (番外)プリントされたポジフィルム
    映写機でスクリーン上に投影すればそのまま鑑賞可能な映像となります。
    アナログのまま記録されてはいますが、まさにアウトプット・リファードな映像です。
    ポジフィルム上の特性を計測して、光源・レンズ・スクリーンの特性を加味すればスクリーン上での色の絶対値を
    計算することができます。
以上、いろいろな例を挙げましたが、整理するとこんな簡単な法則に集約できます。
ディスプレイに表示されるまでに何らかの変換が加わっている

すなわち、ほとんどの映像信号は
「生成時はシーン・リファードであり、何らかの変換が施されて、アウトプット・リファードの映像となる」
「アウトプット・リファードの映像は、そのまま対応したディスプレイに表示することができる」

ということです。


つまり、
シーン・リファード映像はディスプレイで鑑賞することを目的に作られていないので、
直接ディスプレイに表示するのに適さない、あるいは意味がない映像である
といえます。

※ただし、シーン・リファード映像を色評価でなく、信号評価目的(飽和していないことの確認等)に限定して使用する際は意味があると言えます。
※ちなみに、ENGカメラやスチルカメラは変換なんかしてないよ、と思われるかたもいらっしゃるかもしれませんが、
このようなケースでもカメラ内でシーン・リファード映像からアウトプット・リファード映像への変換処理が施されています。

ここまでの説明で、「シーン・リファード画像であるLOG映像はそのままディスプレイで鑑賞する目的の画像ではない」ことが
ご理解いただけたことと思います。しかしまだ、「なぜ眠い?」までは到達できていません。


次回もさらに「LOG映像は何故眠い?」ということについて説明を続けたいと思います。お楽しみに!

内田氏プロフィール

自称、映像システム設計のお困りお助け士。コンシューマーフォトからスタートし、Cineonが発表される前、1995年頃から
LOG映像を使ったシステム設計に携わる。現在は、手間隙かけずにカメラの性能を引き出した絵作りができるような
ソリューションの実現に心血を注いでいる。

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